JOURNAL ASIA

日本の高レベル放射性廃棄物のゆくえを追う

【レポ】柏崎刈羽視察

日本において、ヨウ素剤を各家庭配布している自治体は無い。



ベルギーでは自治体が事前に各関連施設10km以内の家庭に事前配布し、10~20km以内においては希望により家庭配布をしており、他にも条件は異なれどドイツ、オーストリア、フランスでは家庭無料配布勿論のこと、薬局で個人が無料で予防的に入手出来るようになっている。



唯一、柏崎では民間レベルで安定ヨウ素剤の配布がされているため、今回、柏崎の「安全対策」はどのような状況にあるのかを知るための視察に行った。



「行政による各家庭配布」を求めているが、それがどれだけ困難なことか、柏崎で活動している方々の話を聞いて知らされることとなった。



柏崎の場合、地元市民団体をはじめ、一部の柏崎市議会議員らが何十年という長年に渡り、各家庭配布を市に対し求めてきたことにより、一部の薬局で購入することが出来るまでに至っている。行政による家庭配布が実現されてはいないことは事実だが、これは大きな成果に他ならない。



ただ、率直な印象としては、もうずっと前から訴えてきたけれど、結局実現されない厳しい現実を見てきただけに、今も尚訴えている人はそう居ない。もっと云えば、やはり、今迄やってきたけれど実現出来なかった落胆している諦めの様子がよくよく垣間みられた。



失礼かとは思ったが、「皆さん今はどうしてるんですか?」と聞くと「特にその‥半分諦めだよね。」と云う。「東電の職員に逢っているようで、何の意味もないんです。」と他の人が続ける。ただ皆、口を揃えて「各家庭配布した方がいいに決まっている」と云うことからも、その必要性は依然消えていない事実も同時に感じた。



結局、タイミングは異なれど、1年数ヶ月前の中越沖地震が起こった時点で、または3号機の変圧器が燃え、黒煙が上がった映像を市内の人は停電のため見ていないが、他の地域に住む親戚等からの連絡で知った時点で、原子力発電所付近に限らず、柏崎市民、刈羽村民ではヨウ素剤を服用したと云う人に多く出逢った。



一番柏崎刈羽原子力発電所に一番近い刈羽村の住民に放射能漏れが知らされたのは、地震発生から1時間40分後のこと。よくよく聞くと、入らなければならない管理室のドアが地震により開かないというトラブルが起こったためだと云う。それにしても発生から1時間40分知らされず、同時にいつくるか分からない余震のため外に出ていなければならなかった住民にとっては悲惨な状況としか云い様がない。



「もう終わりだ‥」と口々にした彼らだったが、心配だったのでとりあえず飲んだと話す。ヨウ素剤は決して万能薬ではなく、あくまで甲状腺を守る薬ではあるが、住民に知らされるまで時間がかかることを考えれば、飲まないよりか飲んだ方がいいのは明白だ。ヨウ素剤の効果は発生から3時間もすれば半減する。



横須賀市と比較した際、連絡ルートや備蓄食品はほぼ同じであるようだが、横須賀市の対策と異なる点は、大きくみて2点。柏崎市としては以下のことが行われている:



・県が薬局へ協力を要請し、一部の薬局で個人的に購入が可能であること。

・小中学校、県立の小中一貫校、養護学校の計42校に分散配置されていること。



加えて、市の防災原子力課では、原子力災害と一般災害との複合災害を考慮して、平成19年度から柏崎市内の小中学校等へ安定ヨウ素剤を分散配置するが、これに併せて、放射線の影響を受けやすい小中学生に対してヨウ素過敏症等の問診を実施し、特別な対応をしなければならない安定ヨウ素剤服用除外者を把握することで、市民の安全を確保し、また安心を醸成することを目的とした、「安定ヨウ素剤服用に係る小中学生問診実施要領」を作成していた矢先、地震に見舞われたために、今回の地震では実現されなかった。

しかし、今年に入り4月に問診を実施、アンケートを取った。



まだまだ課題は山積みだが、それでもこうした取り組みは画期的だ。



それでも加えるのならば、「私たちはもうどうでもいいけれど‥」と笑いながら、住民らが心配しているのは、幼稚園、保育園に通う小学校未満の子供たちのことだ。本当は一番必要な層であることは、世界的にも知られていることで、そういった場所への配置もしてほしいと訴え続けたものの、実現されていない。理由はひとえに「管理」を市は主張する。「学校なんかは管理を出来ないと云いながら、一方で新潟県が積極的に進めているのがフッ素洗口というもの。私たちが中心になって、絶対にはダメだと云って阻止しているんですが、幼稚園の子供たちにもそれをやらせるっていうんです。フッ素の原液なんかに比べたら、ヨウ素剤なんていうのは何も問題ない。だから一方でフッ素フッ素洗口をやろうとしながら、一方では『ヨウ素剤は配置出来ない』というのはおかしい」とこれまでも反論してきたという人たちがいる。



横須賀市に限らず、行政が頑なに各家庭配布を拒むのは何故か。



様々な理由を聞いた。「配布は薬事法に反する」「薬品だから」「市民が各自で管理が出来る確証がない」/「誤って服用されると困る」等。



実際行政が配布することが薬事法違反であるのかはこれから具体的に調べるが、疑わしい。また他の理由に関しては専ら責任論。ちなみに、横須賀市に関しては「頑なに拒否ですか?」と質問したところ、「頑なに嫌です。」とのこと。理由は主に管理の問題だが簡単に列挙すると次のようなことが挙げられた:

・個人で管理するのは難しい。

・避難所へ行ってまた服用してしまって、二重に服用される。

・違う薬を飲んだのに、自分はヨウ素剤を飲んだと思い込み、避難所へ来ても飲まない。

・ヨウ素剤に対する誤った解釈のせいで、万能薬のように思い込み、避難しない。



責任論は無論、管理能力の話はあまり聞いていても説得力に欠けるように個人的には捉えているが、唯一最後の点に関しては、最も考えられる、大きい点だと個人的には思った。「いくらこちらが『万能薬ではありません』と大きく書いたところで、見ない人は多いって。」と、担当課は担当課なりの悩みがあるようだ。





柏崎刈羽視察は、本当に勉強であり、意見交換でもあった。





簡単にこのようにまとめると、現地では原子力発電所反対の動きが根強いように聞こえるかもしれないが、実際のところ、4人に1人は(関連した職場に)勤めていて、反対は少数派で物もろくに云えないと、刈羽村の市民グループの人たちは話す。



何処も似たような状況だと云うことだ。




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