JOURNAL ASIA

日本の高レベル放射性廃棄物のゆくえを追う

日米交渉の秘密文書

原子力軍艦の不祥事が続く中、国際研究者の新原昭治さんが明かしている日本の港湾内での米原子力艦からの冷却水の放出にかかわる重要日誌、米攻撃型原子力潜水艦寄港をめぐる日米交渉が記された米政府解禁文書から、日本に寄港する原子力艦船に関わる60-70年代の日米政府間の動向をざっくり整理した。



新原さんは【原子力空母母港化の「安全」確認を放棄した外交姿勢】としている。



(新原さんは9月にまた渡米。文書を紐解く日々を送った。今回の渡米で新たに分かったこともあるが、まだきちんと整理されていないということで、ここでも今回それら新情報は含んでいない。)



1963年-64年 「安全性」問題等での日米交渉



米国政府の申し入れで原子力潜水艦寄港受け入れを前提に交渉は始まり、この間、日本は3回に渡って米国に対し、質問をリストにして質問書を出している。しかし、米国政府はいわゆる「ゼロ回答」だった。



≪質問と回答を一部抜粋≫

Q:日本政府 A:米国政府



Q:「原潜の安全性を検討することができるように米国はデータを日本側に提供することが可能か。軍艦の特別の立場はよく理解しているが、軍事機密の許す限り、1960年の海洋法の生物の安全にある安全見積もりにそったデータが準備されていることをのぞんでいる。」



A:「ノー。すべて関連データは機密扱いとなっている。鍵となる情報は米原子力法にもとづく部外秘データ(RESTRICTED DATA「リストリクティッド・データ」)に指定されている。米国政府は安全を保証する。」



RESTRICTED DATA「リストリクティッド・データ」=米原子力法により公開が禁止された情報。

?核兵器の設計・製造・使用 ?特殊核物質の製造 ?特殊核物質によるエネルギー生産に関連する情報のこと(米統合参謀本部編米軍事用語辞典)



(これに対して)

Q:日本政府は、安全性の保証の義務づけを評価するとともに、米国政府が与える立場にない情報については「求めることはしない」と述べた。しかし、「米国政府は艦船〔原子力潜水艦〕の安全を保証する」との言明がもっとはっきり言えば何を意味するのか、また、具体的な艦〔原潜〕の安全性を保証する何らかのドキュメント〔文書または証拠資料を指す〕を引用することによって(一般大衆の目から見て)この言明を裏付けることが可能かどうか知りたがった。



A:「米国政府は艦船の安全を保証する」との言明は、原子力推進装置の設計と作動における原子炉の安全の面が、米原子力委員会とその原子炉安全防護のための法定諮問委員会によって検討され、承認を受けたことを意味している。」

(つまり、ドキュメントは無い。)



A:「日本の領海内では、日本の権限ある当局の事前承認なしには、原子力潜水艦が液体または固体の放射性物質を放出しないことを切望する。」



Q:「この要請に沿うことは、残念ながらできない。〔原子炉の〕一次系のウォームアップ時に、少量の低レベル放射性〔冷却〕水を放出することが必要になる。それは、海洋生物を含む環境放射能に認められるほどの影響は及ぼさない。」



日本はこれに対し、過剰冷却水を海に放出しないやり方について、何通りかの方法を提案したが、「提案された手続きは、作戦行動上、受け入れられない。また、〔放出冷却水の放射能〕濃度は低いので、そのようなやり方は不必要である。」とし、断っている。



そして日本は以下のような結論を出している。

「軍艦としての原子力潜水艦の地位についてわれわれはまちがいなく認めている。しかし、日本の国会での最近の論議やマスコミの論評から明らかなことは、原潜の原子炉の安全性が日本国民のあいだで大きな注目を惹いていることである。このような状況下で、原潜の日本の港湾への寄港の提案に最終的回答をくだす前に、国民に原潜の安全性を確信させる必要があると考えている。(略)注意深く検討した結果、これまで説明は原潜の安全性をめぐる国民の理解にとっては不十分であるとの結論に達した。」



その上で、日本政府は要請と質問、確認を加えてしている。

特に、日本政府としては国会等を納得させるだけの安全性の保証がないため、「米国政府は、原潜の原子炉の設計と作動の安全面は、米原子力委員会とその原子炉安全防護のための法定諮問委員会(ACRS)によって、検討、承認されたこと、また公衆の健康と安全はそれの運転によてt危険にさらされないことを保証する。」という趣旨の正式な声明(STATEMENT)の用意があるか、「建造許可」に類のものが発行される以前のも含めて、建造段階で、どのように検討がされ、「運転許可証」なるものが発行される以前のものも含めて、運転段階ではどのように検討がおこなわれたのか、説明されたい旨述べている。

また、放射能を含んでいる冷却水に関しては、港湾内での放出を強くしないよう、米国が措置をとるつもりがあるのか、問うている。



これに対し、米国政府はこのように結論付けている。



「日本政府を助けたいとは思うが、原潜の原子炉について日本政府が的確な判断にもとづき自主的に安全問題の評価をおこなうに足る十分な情報を、われわれは法律上・安全保障上・政策上の考慮から提供出来ない現実に直面している。」とし、米国政府自身、「原潜の安全性関連の日本政府のあいつぐ質問書は、米国政府にとって深刻なジレンマをもたらした。」としている。



ちなみに、燃料の交換と修理に関して、「日本の領海内で燃料交換や原子炉の修理をおこなうのか。」という質問に対しては「ノー。(=日本の領海内で燃料交換や原子炉の修理しない。)」としている。



1964年8月

米大使館:「外国の港における合衆国原子力軍艦の運航に関する合衆国政府の声明」+

覚書(通称「エードメモワール」)を日本政府に提出。

→これが、現在のファクトシートの前身、と云える。



「声明」:“周辺の一般的なバックグラウンド放射能に測定し得る程度の増加をもたらすような放出水その他の廃棄物は、軍艦から排出されない。”と記載有



*(放射能を含む冷却水の港内放出に関する遣り取りはこれ以降も度々される。

しかし、日本の主張、要求が通ることのない様に注目されたい。)*



・・・|日本の港への寄港|・・・



1964年11月  日本に初めて原潜が寄港@佐世保

(ただし、それ以前に米軍全面占領下の沖縄の那覇港に原潜は寄港を開始していた。)

 これ以後、佐世保、横須賀への寄港は日常的に。

 沖縄では施政権返還後、那覇港に加え、ホワイトビーチにも寄港するようになった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



1965年以降の日米政府間での原子力空母など原子力推進水上艦船の日本寄港をめぐる日米交渉



ここでも、「冷却水を港内に放出するのか」という日本政府の質問に、米国政府は「約束できない」としている。

(米国務省編 『ジョンソン政権期 1964-1968 米政府外交秘密文集集』p85-86)



*1968年1月 米原子力空母エンタープライズ号 佐世保港 初寄港



1968年5月6日



佐世保港に停泊中の米原潜ソードフィッシュ号 異常放射能を日本側のモニタリング・ボートが探知

→科学技術庁はこれを隠した。



結局、日本港湾内での「例外的」な冷却水放出はあるとの日米文書で落着。



**結局、この取り決めは今でも生きているため、日米政府が交わした「一次冷却水を含む放射性物質の排出は禁止する」という約束は偽りだと新原さんは分析、主張をしている。



*5月6日 「西日本新聞」佐世保支局大野誠記者が発見、スクープし、大問題となった。

*5月29日 原子力委員会:政府に対し3点要求 うち1点が「原子力軍艦のわが国寄港中は、原子炉の一次冷却水が艦外へ放出されないこと」





10月22日 三木外相×ジョンソン米大使 「会談覚書」を公表

しかし、冷却水放出をしないでくれ、という日本政府の要求を米国政府が断固拒否で通したため、「覚書」に米国大使が「寄港中における一次冷却水の放出は例外の場合であり、従って今後日本の港においては通常一次冷却水が放出されることはなく、これが現在の実施方式に即したものである」と述べたむね書き込まれた。



1969年11月 原潜サーゴ号 横須賀寄港中、異常放射能を日本側が探知。



日本政府関係者によって、再点検、さらに高い異常放射能が検出された。

この日本の探知に驚いた米国政府は、これまで原子力推進艦船周辺の日本側のモニタリングは、空中、水中、海底土いずれも艦から20m以上離れておこなうという監視体制の日米取り決めを改め、空中モニタリングは今後50m以上離れておこなうよう求めた。



→日本政府はこれに対し、ただちに要求に従うと回答。



1971年末 米国政府の要求に沿った日米密約(confidential agreement)の締結



「異常放射能を含んだ冷却水や核関係物質が、日本の港の中で捨てられてること、排出されることがありうるという前提で、原潜が行動していることが浮かび上がる。」と新原さんは9月5日「NEWS23」にコメントしている。



また、この3回の質問書等を含む、上記日米交渉に関する秘密文書の一部が、再び「秘密」扱いになっていることを、渡米した際、確認したと云う。

それが意味することとは。



Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://journalasia.blog22.fc2.com/tb.php/53-3ea9d1c6
該当の記事は見つかりませんでした。